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Birth

※新選組を追って














夜を越えてやってくる
その心細さが生きる証だから
怖がらないでおやすみ


Birth



北を目指せば目指すほど
森は深く暗くなってゆく。


「夜・・・か」

総司が何ともなしに呟く。

木陰から差し込む光だけが減り、
夜を告げる。

「・・・今、どのあたりでしょうか」

言わずとも二人が追う者の名は一人だけ。
傍らの千鶴が空を見上げた。

「・・・だいぶ近づいているとは思うんだけどね」

たったふたりだけの行軍を始めてから
どれだけの時間がたったのか。

常に薄暗い森の中では時間の感覚が
おかしくなる。

「あと一息かな。あのひと足だけは早いから」

古びた木の根元で総司が足を止めた。

「ひとまず休もう。僕はいいけど疲れたでしょ?」
「あ、いえ、まだ大丈夫です。歩けます」

休み休みとはいえ、ずっと歩き続けているのだから
疲れていない訳がない。

なのに虚勢を張る千鶴に総司は思わず苦笑いを浮かべた。

「・・・嘘つきだね。君は」

顔色は良くないし、声に力は無い。
一目見れば解る。

「う、嘘じゃありませんっ」

男の足と女の足では歩みに差が出る。

足手まといにはなるまいと千鶴が必死になっていたのは
もちろん知っていた。

「・・・仕方ないなあ」

呟き、その背に腕を回すと半ば強引に抱え上げた。

「あ、あっちのほうがいいかな」
「ちょ・・・!沖田さん降ろして」

軽々と抱え上げた千鶴の懇願など意にも介さず、
大木の根の下に腰を下ろす。

「はい、おやすみ」

膝の上で慌てふためく千鶴を抱え直す。

「・・・そんな・・それこそ沖田さんが休んでください。
私ほんとうに大丈夫」
「じゃないでしょ。君、今自分がどんな顔してるか
解ってる?」

図星をつかれた千鶴が身じろぐのを止めた。


「またあした」


とくとく、心地良い心音が聞こえてきて
抱き締める腕から伝わる体温に
身体の緊張が解けるのが判る。

「…おやすみ」

目を瞑れば眠くなるよ、と右の瞼に口付ければ
やがて観念したのか千鶴はおとなしく目を閉じた。

テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

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