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向日葵

※向日葵(ひまわり)
※花言葉・・・「あこがれ」 「私の目はあなただけを見つめる」「崇拝」
愛慕













こんなにも胸が満たされるなんて
思ってもみなかった






目の前にある、その小さな背中を腕の中に閉じ込めれば上擦った声が上がる。


「わっ、え?え?」


甘い気配を微塵も見せないまま起こした、突然の行動。


「あ、あの・・・」


互いの想いを確かめ合った仲だというのに
戸惑い、あたふたする千鶴を膝の上に抱え上げた。

「ちょ…、原田さん?!


驚く千鶴を余所に左之助は構わず、その額に唇を寄せた。


「どうしたんですか、急に…」

批難めいた視線が注がれる。


「んー?ちょっとな」

好いた女を抱きしめたくなるのに
理由なんてない。

傍にいて、心の底まで満たす幸せを感じたら、
何故だかそうしたくなったのだ。


「ちょっと、て…あの、恥ずかしい、です」

ごにょごにょと千鶴がつぶやいた後半の言葉は
小さくて聞き取れなかった。


「…もしかして…酔ってますか?」


なかなか解放しない左之助を千鶴が訝しむのは無理もない。
畳へ落とされた千鶴の視線の先には空になった銚子が数本転がっていた。


「…酔ってねぇよ。たいした量も呑んでねえし」


額から瞼、鼻先と口づけを落とす。


「…ん」


そのまま、淡く色付く唇へ続こうとすれば、とっさに千鶴の掌が差し込まれた。


「そ、れは酔ってるひとの常套句ですよっ」


本人は睨んでいるつもりなのだろうが、見下ろす位置にある左之助からは上目遣いにしか見えない。

おまけに頬は紅く染まり、恥ずかしさからか大きな瞳は潤んでいた。


「お前そりゃ…反則だろ…」
「ぇえ?」


左之助の口許を覆う掌を外し、指先に口づける。
絡んだ視線に堪えられなくなったのか千鶴が顔を逸らした。

揺れた黒髪の隙間から覗く首筋も耳も赤く染まっているのが見てとれる。

むくりと湧き上がる悪戯心に押され、そのかわいらしい耳朶に唇を押し当てた。


「…やぁっ…」


肩を竦めて逃れようとよじる身体を強く抱き寄せた。

「はら、ださんっ…やっぱり酔ってます…て」

細い腕が左之助の身体を押し返すべく、肩にかかるが体格差ゆえにびくともしない。


「ん…?そうかもなあ」

拙い抗いに低く笑いながら、耳の傍で呟けば再度千鶴が身を震わせた。

佳い仲になってから気付いた事だが耳元はどうやら千鶴の泣き所のようだった。


「俺は…お前に酔ってんだよ…千鶴」


細い顎を指先で掬い上げた。
甘い空気に馴れず、未だ戸惑いに揺れる千鶴へ
今度こそ口づける。

くすぐるように何度も何度も触れ合わせる。

「…っん…」

鼻にぬける甘い声。

肩を押し返そうとしていた千鶴の掌が上着を握りこむと左之助の腕がより強く抱き寄せた。

そのまま、畳の上へゆっくり横たえられる。



「千鶴…」


名を呼ばれ、閉じていた瞼を緩く開けば
切なげに細められた左之助の瞳と合う。


「…あ…」


向日葵。
ふいに頭の中に浮かんだのは陽光に似た色を持つ花。

真夏の太陽のような熱を湛えて、琥珀色の瞳が見下ろしてくる。


「どうしようもねえくらい…お前が好きで仕方ねぇ…」


再び落とされた口づけ。
緩く、しかし確実に熱が伝わってくる。


「…愛してる」


低くここちよい声で告げられた愛慕うひとの言葉。



僅かに開いた二人の隙間でさえ惜しくて、千鶴はその背中にそっと腕を回した。

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